ボディビルのかけ声辞典買いました

高橋一生スナフキン。これは雰囲気とらえてますよね。こういう人間になりたいマイク松ですこんにちは。(いうだけなら楽しい)
さて、今極東事務所には富井がいません。帰省しているのですが、さすがの富井もこれはちょっとなといっていた、濃いネタをここで使おうと思います。あ、この記事めっちゃ長いです。

ボディビルのかけ声辞典

これはボディビルの基礎的な知識とともに、実際のコンテストで使われるかけ声について説明している本です。はい、わかりませんよねこんなこといわれても。
ボディビルが筋肉をトレーニングで作り上げて、それをコンテストで披露して、いい筋肉の人が優勝、という流れは大丈夫ですよね。この本ではそのへんの基礎的な知識もしっかり説明してるし、基本的なポーズについても説明してます。ちなみにフィギュアスケートと同じく、男女規定のポーズと、フリーポーズに分かれるらしいですよ。どの部位の筋肉をなんというかとか、細かいところまで解説してます。もちろんたーっぷりの筋肉の写真を使って。ボディビルに興味がそれほどない人は表紙でおなかいっぱいになるでしょう。
かくいう僕もボディビル自体、つまり筋肉とそれを作り上げることに興味はそれほどないのですが、ボディビルのコンテストにはちょっと興味があります。この本にもあるように、ボディビルは筋肉を作り上げていく技術であり、コンテストは採点競技なので、スポーツの範疇に入れることもできるのです。そして何より、ボディビルはこれからみていく「応援のかけ声」で、観客がスポーツの行方にダイレクトに影響を与えることができるのです。
いろいろスポーツはありますが、応援がスポーツの勝敗に影響を与える度合いはスポーツによって異なります。たとえば甲子園のハンシン戦では、ハンシンファンの呪詛にも似た応援で敵チームに脅威を与えますが、ここを基準にすると、ほとんどの応援はこれよりは影響がないと思います。うそだと思う人は甲子園にきてください。先日優勝した御嶽海は応援にすごい勇気づけられたといっていましたが、甲子園は5万人入りますからね。
実質これより大きな応援の影響度といえば、NFLしかないと思います。何しろ観客の作り出す騒音(クラウドノイズといいます)によって、敵チームのQBは自分の指令を他の人に伝えることができなくなり、プレーに大きく影響します。もちろん味方の攻撃中はわりと静かにしています。そしてボディビルの応援は、NFLと同じくらい競技に影響する、僕はそう思います。僕がだいぶ昔読んだ、そしてどうしても思い出せないボディビルまんがによると、応援によってボディビルダーの筋肉は発色がよくなり、輝いてくるらしいのです。ほんとかなと思っていましたが、今回ボディビルのかけ声辞典を読んで確信しました。これはほんとうだと。
先ほどから「応援」といっていますが、ボディビルのかけ声は厳密には応援というより、よくこれだけの筋肉を作ってきたという努力に対する賞賛、ほめ言葉なのです。そしてそのかけ声は、基本的な誰でもできるやつから、どんだけうまいこというてんねんといいたくなるような独創的なものまで多くあるのです。ボディビルのかけ声辞典はそれを集めている本です。自分のほしい本がでてきてうれしいです。
長い長い前置きになりましたが、その内容をちょっとだけご紹介します。

ボディビルのかけ声辞典では、そのかけ声を「ほめる編」「例える編」「超上級編」に分けています。「ほめる編」は基本的なもので、これを覚えて会場に行って大声で叫ぶだけでOKです。「例える編」では少しレベルが上がって、その筋肉を何かに例えてたたえます。「超上級編」はもう何がなんだかという感じです。いわばオレたちの豪太レベルの発想力が求められます。豪太は1人でやってしまいますが、みんなのを集めれば豪太に追いつけます。集合知です。
(1)ほめる編
ここでの基本的なかけ声はもはや英語の辞書では星3つとか2つとかの内容です。いくつか集めてみると、

「切れてる」「バリバリ」「でかい」「広い」

などです。前2つは筋肉の筋が明確(切れてる)でたくさん走っている(バリバリ)ということのようです。あと2つはそのままです。
本の中では「このかけ声が自然と口をつくのです」(p.44)とありますが、初めての人は普通は言葉も出ない状態になると思います。ボキャブラリーは大事。ここのやつをしっかり覚えておけば、たとえば会社の上司が「忙しいところ悪いけど明日、私の代わりにボディビルの大会にいってくれないか」と突然言い出しても安心です。練習もできます。クリスティアーノ・ロナウドのCMでもみながら、適宜「切れてるよロナウド!」などとテレビに向かって声だししましょう。
だいたいは「ナイスポーズ!」みたいなものですが、ボディビルがスポーツなんだなと思わせるかけ声がこの基本的なほめる編でもあります。

「仕上がってる」

これは結果というよりも、それまでの努力や準備をほめているかけ声です。他のスポーツではなかなかないかけ声ですよね。たとえばオリックの選手がさっぱり打てなくて二軍落ちし、戻ってきてよく打てば、「ちゃんと戻してきたぞ!えらいぞ!」みたいな感じの声が出るかもしれませんが、だからこそ「仕上がってる」は覚えておくといいかもしれませんね。わかってるって感じがします。
(2)例える編
みなさん空を見ると、今は夏ですから夏の大三角形がみえて、わし座、はくちょう座、こと座がわかると思います。その星の位置から鷲や白鳥や琴をイメージする。昔の人は想像力豊かだなと思ったことありませんか?その感想はそのまま、ボディビルファンにぶつけていただいて結構です。そのかけ声は、僕らがみたら「筋肉」「筋肉」「筋肉」「筋肉」としか思えないものを、さまざまなものにたとえてたたえるのです。

  • メロン
  • ダチョウの卵
  • クリスマスツリー
  • 板チョコ
  • 手榴弾
  • かに
  • ちょうちょ

これらはみんな、筋肉をたとえてたたえているものです。信じられますか?しかも全然芽が出ないオリックを種いもにたとえるような隠喩ではありません。これらは全部直喩です。この想像力は、ボディビルダーの努力をたたえ、応援するために用いられています。すごいと思います。
とはいえ例える編ですら、次の超上級編に比べたらまだまだやさしいという認識で間違いないと思います。ここは意外に初心者が強いのかも。たとえば不良の輩に追いかけられ、強そうな人たちが集まっていると思って助けを求めに入ったらボディビルコンテストだったという場合でも、素人なりの感性に任せて、「もう筋肉というより…自然薯ね!」などと口走り、自らに秘められた脱構築の才能に目覚めればいいと思います。
(3)超上級編
ボディビルのかけ声辞典の一番の見所だと思います。例える編でさえわれわれの想像力を超えているのに、ここはまさに創造力、クリエイティビティの結晶としての言葉が詰まっています。しかもその言葉1つ1つに対して、きっちりとした解釈が施されています。決してこれらの言葉は思いつきではないのだといわんばかりです。
ここの内容をばんばん取り出すと本の魅力を損なってしまうので、ねとらぼの記事にでてるのを中心に、最小限にしたいと思います。まずは帯についているこちらを。

「肩にちっちゃいジープのせてんのかい」

まあ普段は口にしない言葉ですよね。一度口にしてみてください。これは腕や肩の筋肉がビルドアップされていることをいっているのですが、なかなか深遠ですよね。「ちっちゃいジープ」は「ジープ」ではだめなのです。これは直喩なのです。筋肉に正面から向き合うと、直喩としての「ちっちゃいジープ」になるのです。そして「のせてんのかい」の妙ですよね。ちょっとあきれた、脱帽だというニュアンスを込めているのが秀逸です。
あとはねとらぼの記事にでてるのでは、守破離のごとく徐々に直喩から離れ、「阿修羅像」「プロポーションおばけ」とたとえレベルが上がっていきます。「新人類」「侍!」「石油王!」などはもう存在自体をたたえています。みなさんこれまでの人生で、「プロポーションおばけ」とか「石油王」とか呼ばれたことってありますか?僕も何かにたとえられたとしても阿修羅像とかいわれたことはありません。もしお友達で「オレいわれたことあるよ」という人がいたら、その人がそういえば妙にがたいいいなと気がつくはずです。ちなみにどうも石油王は褐色の肌を例えつつ人間としての大きさもたたえるという高度なかけ声です。そして最終的には。

「新時代の幕開けだ!」

これがくるわけです。幕末の維新志士ですらそんなに口にしなかったであろう壮大な言葉。閉塞感あふれる現代ではまず使われない言葉が、ここでは筋肉に用いられているのです。やったことないですが、たぶんボディビルダーの人は、自分の筋肉で「新時代の幕開けだ!」の言葉をもらえたら、本当にうれしいと思いますよ。なにしろ新時代の幕開けですから。
ボディビルはコンテストなので順位がつきますが、ファンでもなかなか甲乙つけがたい肉体が舞台に並んだときの言葉を最後にご紹介しましょう。

「マッチョの満員電車だな!」

使わないですよねー。たとえ目の前にサラリーマンがいっぱいいたとしても「サラリーマンの満員電車だな!」とはいわないし(まだ乗ってないとかいわれる)、けたたましく騒ぎまくる幼稚園児がいっぱいいたとしても「幼稚園児の満員電車だな!」とはいわないでしょう(ここほいくえんだよとかいわれる)。そうなのです。満員電車は1人1人に筋肉がめっちゃ「詰まってる」(ほめる編にもあるかけ声)、そしてそれが集まって視界に筋肉以外何も入ってこないという状況を完璧に表現しているかけ声なのです。なかなか他では使えないけど何かで口にしたい。
しかし正直筋肉の善し悪しはわからないけど、全体をたたえることとができるいい言葉です。たとえば友達のクラシックバレエの発表会をみにきたのに、会場を間違えてボディビルコンテストにきてしまった場合でも、人にいわれる前に「マッチョの満員電車だな!」と絶叫しておけば、ボディビルダーをたたえたあとでスマートに会場をあとにすることができるでしょう。
超上級編はこのような創造力に溢れたかけ声がならんでおり、1つ1つとりあげるとあと3回は記事がかける分量です。ボディビルのかけ声辞典、みなさんもどこかで読んでみてください。人をほめるのにこれだけの創造性が使われてること、他にはないと思います。

カテゴリー: その他スポーツ パーマリンク

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